あまんきみこ作の絵本「おにたのぼうし」
おにたのぼうしは小学校の国語の教科書にも掲載されているし、公文の推薦図書にもなっています。
私も子供の頃国語の授業でやりましたが、ひさびさに読んでみたら
なんだこのやるせなさはー!
このモヤモヤはどこにぶつければいいのー!?
となったのでブログに感想文を書くことにしました。
あくまで個人の感想であり、個人的な解釈です。
作者である あまんきみこ先生の考えや意図を調べたわけではなく、おにたのぼうしが作られた背景や過程を調べたわけでもなく、教科書を読んだだけの状態での感想・解釈です。
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おにたのぼうし あらすじ
ある節分の日、隠れ住んでた家で豆まきが行われたため家を出た黒鬼の子供「おにた」は、豆まきをしていないしひいらぎも飾ってない家を見つけて潜り込みます。
その家には病気で寝ているお母さんと女の子がいました。
お腹を空かせている女の子のために、おにたは赤ご飯と煮豆を持ってきてあげたのですが・・・
おにたのぼうし 感想
あーもう、やるせない。
この気持ちをどこにぶつければいいのか。
小学2年生の教科書にも同じくあまんきみこ作の「きつねのおきゃくさま」という話が載っているけど、あれはきつねは最期は幸せだったんじゃないかなと思えます。まだ救いがあります。
しかし、おにたのぼうしではおにたが最後幸せだったとは思えません。
女の子も悪くない。女の子は何の悪気もない。
病気のお母さんをけなげに看病する優しい女の子。
悪役のいる物語なら悪役に怒りをぶつけることもできるけど、女の子は何も悪くないのです。
悪いとすれば鬼は悪いものと思い込んでること?
でも、世の中みんな節分には豆まきをするのに、この子にだけ「もっと思考を柔軟にして良い鬼もいるかもしれないって考えてみようよ」とは言えない。
せめて女の子の言ったように、消えたおにたは次はかみさまに生まれ変わればいいなと思う。
外に追い出される鬼じゃなくて、うちに来てくださいって言われる福の神に。
おにたのぼうしの解釈
さて、おにたのぼうしのラストシーンを皆様はどう解釈されましたか?
・おにたが豆を置いてすばやく立ち去った
・おにたは豆になった
大きく分けてこの二つが考えられます。
おにたは梁(はり)の上にも素早く登れる運動神経の持ち主。
女の子の目に見えないくらいの速さで立ち去ることもできたのではないか?
それでまたどこか別の家に行ったのでは・・・?
と思いたい、そうであって欲しい気持ちもあるけど、
おにたの身体と同じ黒い豆、そしてまだあたたかいことを考えると、おにたが豆になったと私は解釈します。
そして豆になった理由やおにたの気持ちも二通り考えられます
①女の子に豆まきがしたいと言われて悲しかったけど、女の子のために豆になってあげた(自己犠牲的な優しさ)
②悲しみのあまりに豆になってしまった。消えてなくなりたいほどの悲しみが本当におにたを消してしまった。
小学生当時の私なら「豆になったのはおにたの最後の優しさ」と解釈したかもしれません。
でも、おにたの最後のセリフからは悲しみや悔しさしか感じられません。
声を絞り出すように「お母さん良くなるといいね」と言い残して豆になったなら①なんですけどね。
豆まきをしたいという願いを叶えてあげたかっただけなら、自ら豆にならなくても、赤ご飯と煮豆のようにどっかから豆を持ってきて女の子にあげればいいんですよね。
悲しくて悲しくて消えてしまった。でも、何も残さず消えたのではなく、最後に豆を残して消えたのはやっぱりおにたのやさしさだったのかな。
考えるたびにいろんな考えがわいてきて、まとまらないのですが
おにたは悲しくてしょうがなかったけど優しいから豆になった。
豆はおにたのやさしさの結晶?
おにたに絶望と悲しみしかなかったとしたら、そのおにたの化身である豆をばらまきながら「おかあさんはきっとよくなるわ」なんてサイコパスですよね。
でも、ラストの豆まきシーンからはそんなおどろおどろしさは感じられません。
静かだけれどどこかあたたかい、お母さんは良くなるという希望も感じられる。
おにたは絶望したけど、女の子は希望を感じている。
絶望と希望の対比みたいなのを作者は書きたかったのでしょうか。
世の中からまだまだ無くならない差別や偏見。
おにたのぼうしには偏見や思い込みを持たないで。ってメッセージも込められてるのかもしれません。
おにたは人間に「悪い鬼ばかりじゃない」ってわかってもらえなかったけど、せめて我々読者はおにたという気のいい鬼がいたことを心のどっかに住まわせておきましょう。
ちなみに、教育出版の教科書「ひろがる言葉 小学国語」では4年生でもあまんきみこ作「しろいぼうし」が掲載されてます。きつねのおきゃくさまとおにたのぼうしを読んできた身だと「またあまんきみこ作品か!」と身構えてしまいますが、不思議系の話ではありますが重い話ではないのでご安心ください。
「ちいちゃんのかげおくり」は教育出版ではやりません。
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